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竹宮恵子『吾妻鏡』(マンガ日本の古典14:中公文庫)

中公文庫の「マンガ日本の古典」のシリーズの一つで、上中下の三巻。

同シリーズのさいとうたかを氏の荒々しい『太平記』を読んだ後で、女性作家には坂東武者の描写は荷が重いかと思われたが、平家の公達(重衡)や頼朝の雅さは格別だし、巻を追うごとに次第に筆も厳しさを増して、鎌倉初期という時代を実に活写している。

特に素晴らしいのは源実朝で、あの純真で学問好きな少年→青年が、なぜあのように苦しみ、同族による無残な死を迎えならなければならなかったか、思い起こしても涙が出る心地がする。

また、優秀な組織人である梶原景時、清廉潔白な畠山重忠や好漢・和田義盛たちがなぜ死んでいかなければならなかったのか、またそうしてまで鎌倉幕府の権力を守った北条義時だからこそ乗り切れた後鳥羽上皇との対決~承久の乱~を思うとき、歴史の大きなうねりと、それを動かし、そこに巻き込まれていった人々に心を馳せざるを得ないのである。

女流作家の手になる同様な物語で、NHK大河ドラマの「草燃える」があり、著者もある程度は影響を受けていることと思うが、要所要所のエピソードの描写はなおそれよりも深いものもある。著者も巻末に書いているように、ページ数が足りないのが惜しまれるような大きなテーマであった。

男性的な武者たちを描くには仕方のない限界があるにせよ、鎌倉とは、そして武家政治とは、またその中で死んでいった人々のものの哀れとはということを、考えたり感じたりする最適の作品と言えよう。

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