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山下康博『指揮官の決断』(中経文庫)

映画「八甲田山」で高倉健が演じた「徳島大尉」のモデルになったのが、この書の主人公・福島泰蔵大尉である。

私はこの書を書店で最初に見たとき、いかにもビジネス書にありがちな「八甲田山の失敗から学ぶ」というような軽薄な書かと思った。
しかし違った。この書の著者は青森在住で、部屋に福島大尉の写真を飾って日夜励ましをもらっているという方なのである。

新田次郎の小説や映画で良く知られる悲劇だが、それには伏線があった。
その少し前、青森第5連隊の神成大尉(映画では神田大尉)が小峠まで下見に行ったのだが、その日は非常に好天で、その予備知識がつい油断を生むことになったのかもしれない。
また、本質的にはあわただしい日程が準備不足・研究不足を生んだという一面もあった。

その点、弘前第31連隊の福島大尉は十分に研究・準備して臨んだのは小説等に詳しい。

結果、たまたまその日程は日本歴代最低低温を記録するほどの大悪天となり、目的地への道を失った青森第5連隊の雪中行軍隊は雪の中を彷徨し、200名以上を失うという大遭難になった。
反対方向から八甲田に入った福島大尉率いる弘前第31連隊の雪中行軍隊も、犠牲者は出さなかったもの八甲田山の突破は決して簡単ではなく、予定の日程より遅れ山中で眠らずに過ごし、その後何とか下山している。

自主独立の精神の持ち主の福島大尉は、理由はわからないが、上司の友安少将(第4旅団長:この遭難事件後に左遷)にも不満があったらしい。その辺りの事情も描かれている。

著者の、福島大尉への尊敬の心が伝わってくる好著である。

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