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古川武彦・大木勇人『図解・気象学入門』(ブルーバックスB-1721)

昨日読了。

普通の気象の本を見れば、雲の十種分類とか、雨に「暖かい雨」と「冷たい雨」があることや、高気圧からは右回りに風が吹き出し、下降気流によって雲が消え、低気圧では左回りに風が吹き込んで前線によって天気が悪くなる、ということを教えてくれるが、この本は現象のもっと根本的な原理まで切り込んでくれて、非常に納得できる。

たとえば「暖かい雨」と「冷たい雨」は、漠然と熱帯なら最初から水の暖かい雨で、温帯以北では雪の結晶が溶ける冷たい雨となると思っていたが、両者、特に冷たい雨の成因にはこんなメカニズムが潜んでいたのかと思い知らせてくれる。

言うなればこれは、「多くの可能性を持つ者の中から少数が独占的に成長するメカニズム」なのだ。

過冷却の状態に陥った水と氷の飽和水蒸気圧の差から、水に対しては不飽和だが氷晶に対しては飽和している状態が生じたとき、氷は昇華せずに成長し、水滴はどんどん蒸発して大気に水分を提供する。

その結果、最初に氷晶として成長したものの「独り勝ち」となって、微細な雲粒からある程度の大きさを持つ雪の結晶(そしてそれが解けて雨滴に)になっていく。

ただ漠然と「雲の粒が集まれば雨になる」という認識がいかに「つめの甘い」ものだったか。

また、高気圧から風が吹き出していくのであれば、なぜそこから空気はなくならないのか、少なくともなぜ気圧は下がらないのか。

暖かい空気と冷たい空気から前線が発生するというが、なぜそのような断層状態が生じるのか。

赤道付近には貿易風という東風が吹いているがそれはなぜ生じるのか。

また同じく偏西風やジェット気流はなぜ存在するのか。

「大気が不安定」というのは根本的にどういう状態か。

台風はなぜ猛烈に発達して強風や豪雨をもたらすのか。

それらを空気分子、気圧、断熱膨張、赤外線の放射、地球の自転、いわゆる「気圧のセオリー」、潜熱、高層天気図の気圧の尾根と谷、などの根本に立ち返り、原理的に納得の行くように説明してくれる。

単なる気象現象の紹介や知識の本ではなく、真の意味での気象現象の解説の本なのである。

読んで上記のような漠然とした謎が次々と溶けていったし、また気象というのはあらゆる人の生活に密着するがゆえに、また、原因と結果、成因と因果関係といった思考法になじみ鍛えるためにも、若い人をはじめ多くの一般ピープルにこそ読んでほしい本と言えよう。

大気や大地の熱エネルギーについて理解すれば、雲や風もまた接するのがおもしろくなる。

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