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ことよろ

正月の第二弾。

 述懐     魏徴(唐)

中原還逐鹿
投筆事戎軒
縦横計不就
慷慨志猶存
仗策謁天子
驅馬出關門
請纓繋南粤
憑軾下東藩
鬱紆陟高岫
出没望平原
古木鳴寒鳥
空山啼野猿
既傷千里目
還驚九逝魂
豈不憚艱険
深懐國士恩
季布無二諾
侯贏重一言
人生感意氣
功名誰復論

中原還(ま)た鹿を逐(お)い
筆を投じて戎軒(じゅうけん)を事とす
縦横の計(はかりごと)は就らざれども
慷慨の志 猶お存せり
策に仗(よ)りて天子に謁し
馬を駆りて関門を出ず
纓(えい)を請うて南越を繋ぎ
軾(しょく)に憑(よ)りて東藩(とうはん)を下さん
鬱紆(うつう) 高岫(こうしゅう)に陟(のぼ)り
出没 平原を望む
古木に寒鳥鳴き
空山に野猿啼く
既に千里の目を傷(いた)ましめ
還た九逝(きゅうせい)の魂(こん)を驚かす
豈(あに) 艱険を憚らざらんや
深く国士の恩を懐(おも)う
季布(きふ)に二諾(にだく)無く
侯贏(こうえい) 一言を重んず
人生意気に感ず
功名 誰が復(ま)た論ぜんや

隋が天下を統一したけれども、その支配は再び乱れて群雄は天下を争い
私も文筆を捨てて軍事を諮ることとなった
群雄の一人・李密に献策して天下を取らせようとしたのは失敗したが
まだやってやろうという気はなお残っている
(後漢の鄧禹のように)つえをつきながら唐の天子・李淵にお目見えし
使者となって馬を駆って函谷関の門を出て行く
(漢の終軍やレキ食其<れきいき>のように)冠の紐で南越王を縛り上げたり
車の手すりに寄りかかりながら東の国々を弁舌で下したような功績を今こそ立てよう
その途中、くねくねと道が曲っている高い峯に上り
見え隠れする平原を望む
古木には冬の鳥が鳴き
人もいない山には野猿の声が聞こえる
千里の遠くまで見やるに心も痛み
またあまりの遠さや故郷を想って魂もさまよい帰る
私もこのような険しい山道を苦しく思わなくもないけれども
私を国家的な人物として待遇してくれた我が君の恩を深く思うのだ
いにしえの季布は一回引き受けたら変えることは決してなかったし
いにしえの侯贏は魏の信陵君への一言を重んじて死んだ
人生は心意気に感じるもの
結果としての功名は誰が問題にするものか

※ 言わずと知れた『唐詩選』巻頭の一首だが、私は高校時代に読んで(もちろん多少の努力はしたが)すんなり覚えてしまった。少年の記憶力が今となっては羨ましい。高校の漢文の教科も、もちろん杜甫の老病の名詩なども悪くはないのだが、この詩や曹操の詩などのような年少者の志を書き立てるような詩にもっと触れさせても良いのではないか。覚えれば一生の財産となるものだから。

※レキは麗に「おおざと」

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